「カムイワッカ部会」という会合が、北海道斜里町のゆめホールというところで2021年12月24日に開催された。私は以前からカムイワッカの一の滝より上流部への立入禁止を解除したいと考えており、2020年から役所や関係機関を回って立入解禁の重要性を訴えてきた。今回は、いっしょに活動してきたウトロの旅館経営者のK氏の依頼を受けてこの会合に参加することになった。
部会に参加するにあたって、カムイワッカ周辺のみどころを参加者に知ってもらう必要があると考えた。なぜなら、私はあの地域を研究しているが、その多くは未発表の情報なので参加者たちはあの地域の見どころの多くを知らない。どこにどのような魅力がカムイワッカ川周辺にあるのかを把握しないと議論のしようがないと思うのだ。それで主催者側の方に会合でカムイワッカ周辺の魅力について、資料を見せながら話をさせてくれとお願いした。ほどなくして斜里町役場から電話があり、それはできないと言われた。理由は時間がないことと、役所が混乱するからだという。納得できないが、時間が無いのならしょうがない。翌日、再び役所から電話がかかってきた。今度は、私が用意した資料を配るなと言ってきた。
(斜里町役場が配るなと言ってきた資料http://www.earthscience.jp/20211226kamuiwakkahandout.pdf ※一部修正済)
どういうことだろうか。カムイワッカ周辺に何があるのかを会議の参加者が知らないと、議論にならないではないか。私は昨年と今年カムイワッカ周辺を開放してくれと、いろんな役所に掛け合っているので、最初から警戒されていたのかもしれない。なんだか嫌な予感がしていたが、12月22日水曜日私は自宅がある京都を出発し知床へと向かった。
12月24日金曜日9時30分にカムイワッカ部会が始まった。いくつか議題があって、私は積極的に質問や意見を言った。
一の滝より上流部への立入の話のあと、ガイドさん2人の方が意見を述べられた。2人とも五の滝にお客さんを連れて行きたいと述べていた。
彼らの意見の前提になっている現在のカムイワッカの状況はこうだ。現在、観光客が普通に入れるのは一の滝の少し上までで、それより上流には協力金を払った上で、ガイドを雇って入らなくてはいけないことになっている。それは試行期間として行われている事業で、その後どうなるかは今のところわからない。今年の試行期間は7月の20日間に限定されていた。しかしそれでも入れるのは温泉浴ができる四の滝の手前までで、四の滝の滝つぼは、落石で埋まっていて入れない。しかしそれよりさらに上流の五の滝にいくと、温度が41℃前後で深くて広い滝つぼがあり、温泉浴が楽しめる場所がある。五の滝へはガイド付きでも行くことができない。
ガイドさんたちに続いて私も手を挙げて質問した。まず、五の滝は、その上で84℃の温泉が湧いていて、滝つぼでちょうどよい温度になることや、滝をお湯が流れ落ちるときに、もうもうと湯けむりが立ち上ってまさに「カムイワッカ湯の滝」であり、一の滝とは比較にならないくらい素晴らしいところだと紹介した。そのうえで、なぜ五の滝に入れないのか、理由が知りたいと質問した。
役場の商工観光課の人が回答をした。昨年からこの会合でそういう議論をしていたらしい。その上で、落石のリスクを客観的に評価できないとも言っていた。
落石のリスクを客観的に評価できないって???私は、夏に四の滝と五の滝の間の岩盤強度を計測して、2カ月前も前にそのデータと評価を簡単なレポートにして斜里町役場に持っていったのだが(http://www.earthscience.jp/gonotaki.pdfを参照)、それがまったく採用されていないのだ。せっかく情報提供したのに、彼らは一体なにをしているのだろうか。
一応回答はされたが、具体的にどこが問題で五の滝に行けないのか明確な回答は得られなかった。ただ、五の滝がいかに素晴らしい所かを参加者に説明することはできたと思う。しかし、やはりどうも私のことが煙たいようで、最後は役場の人が私の意見を遮る形で終わった。
全体を通して主催者側の斜里町役場は、私に意見を言わせたくないようで、しばしば妨害を受けた。特に五の滝の質問をしているときは酷いと思った。よほどヤバイ質問だったのだろう。途中休憩がはさまれたが、そのときに役場職員が私を会議に呼んだ民宿協会のK氏の所に来て何かを耳打ちした。その直後にK氏は私に会場から出るように言った。それは、この地域が裏に何か大きな問題を抱えていることを示唆していた。しかし、私はそのまま居座り続けた。カムイワッカ川の解放のためだ。
カムイワッカ川は、ただの川ではない。一度は大量の硫黄で埋まった。強酸性の温泉が湧出して温泉浴が楽しめるし、温泉湧出や温泉沈殿物でできた貴重な地形を観察することができる。この興味深い自然現象を、観光客が見学・観察することができる貴重な場所なのだ。この川を見たことが刺激となって自然科学の道を目指す若者が現れるかもしれない。この国の未来のため、世界のために、ここを解放しなくてはいけない。そう思うのだ。斜里町役場が圧力をかけてこようと、何人かの人達から白い目でみられようと、そう簡単に引き下がるわけにはいかない。
休憩時間の後、会議の後半が始まった。道道知床公園線の工事予定についての説明が、北海道オホーツク総合振興局網走建設管理部からあり、私が質問をした。
工事はいつ終わるのか?と質問したが、わりと丁寧な説明がなされた。予算配当が毎年4月に決まるので、数年かかるようだ。工事が終わると観光客が入れるのか?という質問については、入れるようになるとのことだ。現在は登山客に限って申請書に記入すれば通れるようになっているが、落石工事が終わったらそれも不要になるのだという。この回答が得られたのは良かったと思う。将来的には、登山口周辺にある鉱山時代の歴史的遺構を観光客が見学できるようになる可能性があるのだ。
他にもいくつか議題があり、この日は12時10分ごろ部会が修了した。
はたして、今回のカムイワッカ部会での発言で、どれくらい成果がでるだろうか。発言して終りではなく、その後回答どおり事業が行われているかを確認していかねばならない。それと、今回部会に参加して、もっともっと国民が発言する必要があると思った。国民が(住民が)発言して意思表示していかないと、役所が勝手に物事を決めてしまう。ここの住民はおとなしすぎる。日本では、主権者は国民だ。時間が長びいてもいいから遠慮なんかせず、どんどん意見を言うべきだと思う。