湯ノ平口は前掛山と黒斑山の間にできた谷間の比較的平坦な地形をしたところで、草地に落葉松などがまばらに生えたところだ。左の写真の奥に見えているのが前掛山の麓の部分で、噴石は前掛山の向こうにあって、湯ノ平口から1kmほど離れた釜山火口から飛来してくる。人の力では動かせないくらいの大きな噴石が2kmも離れたこの場所に落下して地面にクレーターを形成しているのを見ると、自然の力の偉大さを見せ付けられるような感覚だ。
これは湯ノ平口にあった直径1m余のクレーター。左手前にある黒い石は噴石の一部だ。この噴石は浅間山で普通に見られる安山岩の一種だ。噴石はもっと大きかったのだが、この場所に落下したときの衝撃で噴石は大きく2つの塊と小さなかけらに割れた。下の写真はもう少し後ろに下がって撮影したもので、右下のほうにもう一方の片割れが写っている。(写真は10月10日14時51分に撮影)
噴石は落下したときの衝撃で落下地点の軽石混じりの土砂を押し出した。それが写真手前に向かって扇型に広がっている。
この場所は林から少し離れており、落下したときの角度はわからなかった。
噴石が飛来した水平の方角はS83°W であった。(S83°Wというのは南の方角から83°西へ回った方角という意味で、つまりほとんど西の方向ということになる。)これは押し出された土砂の方向とクレーターの形状を見て、クリノメーターで計測した。
この場所のさらに火口方向8mほどの地点にさらに大きなクレーターが見られる。これは推測の域を出ないのだが、これら2つのクレーターを造った噴石はもともとひとつの噴石だったが、火口の爆発によって吹き飛ばされる際に大きく2つに割れ、それらが2つのクレーターを造ったのではないだろうか。
噴石は火口で熱せられていたため、落下したときも非常に高温であった。噴石を持ち上げてみると、下敷きになった草が炭化していて、土の中に棲んでいたと見られる虫が黒こげになって死んでいた。
このクレーターの様子を図に示した。左の丸い部分はクレーターで、その右に広がっているのは押し出された土砂をあらわしている。濃い灰色は噴石。
湯ノ平口 火口からS75°Wの方向へ2kmの地点。
※クレーターの調査の際は落下時の状態を破壊しないように努めました。しかし、前日は台風の影響で大雨が降っており、このため、噴石が流されるなど、落下時の状況は多少変化しています。
噴石の被害1へ(木をなぎ倒した直径3mのクレーター)
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